人手不足は、今や企業経営にとって最重要課題の一つといえる。有効求人倍率の低下や就業者数の増加など、緩やかながら改善を示す傾向が見られるものの、雇用のミスマッチもあり、人手不足倒産は過去最多ペースで推移している。
建設・物流業における「2024年問題」、団塊の世代が後期高齢者になることで、さらなる労働力不足が予想される「2025年問題」など、解決すべき課題は山積しており、事業の継続・発展のために、省力化や合理化などの投資が急がれる。
「情報サービス」では71.9%、深刻なSE不足、全業種を大幅に上回る
<調査結果(要旨)>
正社員が不足している企業の割合は51.0%で、引き続き5割を上回った。業種別では、ITエンジニア不足が目立つ「情報サービス」が71.9%でトップ。2024年問題に直面する「建設」(69.5%)、インバウンド需要が好調な「旅館・ホテル」(65.3%)も高水準に。
非正社員における人手不足割合は28.8%となり、7月としては2年ぶりに3割を下回った。業種別では、「飲食店」(67.5%)は前年同月から10ポイント以上も低下したものの、依然としてトップだった。
●今後の見通し:就業者の高齢化が深刻、若年層の呼び込みへ「選ばれる会社」としての差別化が必須
こうしたなか、人手不足倒産は急増傾向にある。2024年上半期(1-6月)は182件が発生し、過去最多を大幅に上回るペースで推移している。
そのうち建設業は53件、物流業は27件とそれぞれ増加が顕著で、「2024年問題」が直撃した結果となった。両業種とも人手不足が一因となってオペレーションが回らなくなり、業績が維持できず倒産に追い込まれるケースが続出した。
さらに、就業者の高齢化も追い打ちをかける。総務省「労働力調査」をみると、就業者数のなかで一般的に「定年」の区切りとなる60歳以上の割合は21.8%となり、統計開始以降で過去最高を記録した。
こうしたなか、同調査では、2023年時点の転職等希望者は1,035万人となり、過去最多を記録するなど転職市場は活況を呈している。労働市場の流動化が進めば、より魅力のある企業へ労働力移動が活発化し、労働者から「選ばれる会社」としての勝敗がこれまで以上に鮮明になるだろう。
業界を問わず、人材の流出を防ぐには、自社でしか得られないスキルや経験、給与水準などの差別化が欠かせない。企業にとって最も重要な経営資源ともいえる人材の確保・定着に向け、企業の人事戦略は一層重要性が増しているといえよう。