帝国データバンクの調査では、入院施設を持たないクリニック(無床診療所)の休廃業・解散が258件と過去最多ペースで推移するほか、すでに昨年の通年件数に並んだ倒産(9件)と合わせ、累計267件のクリニックが市場から退出したことが分かった。
コロナ禍で長期化する受診控え、経営に大きな打撃
6月までに廃業や倒産の累計が250件を超えたのは過去初めてで、このペースが続いた場合、2021年は過去最多となった2019年(406件)を大きく上回る500件超のクリニックが市場から退出する可能性があるという。
クリニックではこれまで、少子高齢化に伴う医療ニーズの拡大に加えて、美容皮膚など保険診療に依らない自由診療領域での需要も拡大した。
こうした経営環境もあり、既存の「町のかかりつけ医」に加え、利便性に優れた鉄道駅の近くや、ショッピングモールなど複合商業施設内へのクリニック開業が活発に行われてきた。
一方、地域によってはクリニックが集中して患者の獲得競争が激化する傾向にあったほか、開業医の高齢化や後継者不足など事業承継面での課題も抱えていた。
こうしたなか、2020年3月以降の新型コロナウイルスの感染拡大により、三密を避ける行動や、医療機関でのクラスター発生などから患者の受診控えが発生。
各クリニックでは長期にわたって「患者が来ない」という、過去に例を見ない問題に直面し、収益の大幅悪化などから閉院などに追い込まれるケースが発生している。
(慶尾六郎)