帝国データバンクの調べでは、写真スタジオなど写真撮影業の倒産が10月までに20件発生した。
2019年通年の件数(11件)から既に約2倍の水準に達し、この時点で既に過去10年間で最多となった。ピークとなった2008年(33件)から減少傾向にあったが、今年は一転して急増傾向となっている。
再び大きな苦境に立たされる「街の写真スタジオ」
デジタルカメラやスマートフォンの普及により写真の「コモディティ化」が進み、現像やプリント需要減に直面した写真ビジネス。
近年は「ハレの日」需要の掘り起こしに成功し、業容が持ち直しつつあった。しかし、新型コロナの影響でその大部分が消滅。行き場を失った写真スタジオの閉館や倒産が相次ぎ発生しており、写真撮影ビジネスは再び大きな苦境に立たされている。
近年は下げ止まりの傾向が見られるもコロナ禍が大きな打撃に
帝国データバンクが推計した写真撮影市場は、2019年で約2000億円。08年頃までは急激な需要縮小が続いたが、近年は下げ止まりの傾向が見られる。
コロナ禍でハレの日やイベントなどの多くが中止や自粛に追い込まれたほか、インバウンドも消失したことで、写真需要が急激に収縮した。
もともと、スマホなどに機会を奪われた撮影事業の「テコ入れ」としてハレの日に注力した写真スタジオにとっては、大きな打撃となっている。
デジタルカメラやスマホの普及による「写真のコモディティ化」という危機を、「高付加価値化」への転身で乗り切った写真業界。コロナ禍で再び訪れた危機にどのような変革で打破していくのかが注目される。
(慶尾六郎)